2010年6月に全面施行された改正貸金業法について、上限金利見直しとの報道があります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120705-00000006-jij-pol
この報道を受けて、消費者金融の株価は軒並み上昇しています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120705-00000002-scn-biz
改正貸金業法の目玉は、「上限金利の引き下げ」と「総量規制の導入」でしたが、このうち、「上限金利の引き下げ」について、見直し(=引き上げ)を検討しているようです。

理由として、「資金繰りを消費者金融などに頼っていた事業者がヤミ金融に流れる弊害が出ている」、ことを挙げています。
第180回国会 財務金融委員会 第2号 平成24年2月24日においても議論がなされたようです。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/180/0095/18002240095002a.html

が、これについては若干の疑義があります。

まずそもそもそのような事実があるのでしょうか?
少なくとも、私の同業者の周りでそのような話は聞いたことがありません。
私自身の体感として、闇金融のピークは2003~2004年くらいであったと思います。
特に090金融とかが多かった気が。
余談ですが、その後2005年くらいから振り込め詐欺の相談が増えました。
たぶんやってる人たちは同じ人種の方たちなのでしょうね。
少なくとも、改正貸金業法全面施行後のこの2年で、闇金の相談が激増したと言う感覚はありませんし、むしろ、ここ数年闇金融の相談を受けた記憶がありません。
悪質商法では、むしろ、各種の振り込め詐欺のほうがよっぽど相談が多いと思います。

そして、この「闇金融に流れる」という議論は、改正法成立時にすでに議論済みのことです。
数年前の議論を蒸し返しているにすぎません。
そもそも、闇金融は犯罪です。
警察がきちんと対処すればよいのです。
仮に、金利が上がれば、さらにその金利で借りられない人が闇金融に流れます。
そうなったら、また金利を上げるのでしょうか?
完全にいたちごっこですね。
警察による徹底的撲滅以外は、闇金問題の抜本的解決はありません。

また、法改正の際に、この「闇金融に流れる」議論の帰結として、対策は打ってあります。
総量規制の例外規定です。
http://www.0570-051-051.jp/contents/user/1-1.html
この中で、個人事業者に対する貸付けについては、総量規制の対象外となっております。
もちろん、貸し付けをするしないは、それぞれの業者の判断によります。
しかし、改正貸金業法の金利も、現在の政策金利(0.3%)を考えれば15%~20%と相当なものです。
この金利は、リスクの対価としては、十分なものではないでしょうか?
さらに言えば、残酷なようですが、この条件で借入できない事業者は、その後の事業を継続することが可能なのでしょうか?
そのような事業者は、法的整理等別の方法を考えるべきだと思います。
今は民事再生法など、倒産法制もかなり整備されていますので。

以上から、私はこの改正貸金業法の見直しについては反対の立場です。
今後も注視していきたいと思います。