本日、下記のような報道がありました。

http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20120725/CK2012072502000012.html

山崎たつえ松本市議が「市内に避難している被災者の支援が手厚すぎる」としたチラシを配布した、という記事です。

これは中日新聞のものですが、地元紙の信濃毎日新聞にも同様の記事が掲載されています。

言いたいことはいろいろありますが・・・。

 

まず、「被災者への市の負担は水道料金が百七十万円、保育園・幼稚園の利用料が百三十九万円に上る」ことについては素直に松本市に対し感謝いたします。

避難者の多くは本当にありがたいことと感じています。

 

その上で、今回のこの件、考えてみたいと思います。

 

1.ソースについて

信濃毎日新聞の報道によると、このビラの作成について「避難者には話を聞かず、東電などに取材して書いた」とあります。

一方的情報だけでこのビラを書いた、と。さらに、その情報は東電から、と。

まずは、現段階で東電の情報を鵜呑みにする、そのセンスに脱帽です。

 

そして、対立当事者の片一方、しかも強者の側の話しか聞かないで、弱者である避難者を非難するかのようなものを書いてしまう。

政治は強者のためのものでしたっけ?弱者を守ることが政治の役割であると私は習った記憶がありますが。

 

強者弱者は別としても、もう一方の当事者に対する配慮というものはないのでしょうか?

私人ならともかく、この方、市会議員という公人ですよ?

 

2.手法の問題について

まぁ、1.はこの方の個人的センスなので百歩譲っていいとしましょう(それでも公人としてどうなのかと思います)。

なぜ、この意見の発表方法がビラ配りなのでしょう?

普通に議会活動の中で行えばいいんじゃないかと思いますが?予算の問題なのですし。

環境問題や社会問題のように、広く一般市民に訴求しなければならない、という問題でもないと思います。

 

3.賠償について

まず、賠償については、現時点でも、受け取っている人、受け取っていない人、(自主避難等)受け取れない人、といます。

受け取っていない理由は様々です。金額に納得いかない人。納得いってもやり取りがわからない人、そもそも金額の問題ではないんだ、という人。

また、厳密には、自主避難者についても、大人8万円、子ども40万(避難した子どもは60万)という賠償がありましたが、そのことを指しているようにも思えません(ちなみにこれは震災当時福島県の一部区域に住んでいた方全員が対象なので、避難者特有の賠償ではありません)。

いっしょくたに「避難者は賠償金を受け取っている」という記載には違和感があります。

 

実際、私は所謂自主避難者と呼ばれる者です。

福島での仕事を辞め、長野で改めて業務を再開しました。専門職種だからこそできた選択だと思います。一般の方はそうはいきません。

そんな私でさえ、今の生活は、これまでの蓄えを崩しながらの生活です。ほかの自主避難者は、言わずもがな、でしょう。

 

4.自立し生活できる支援について

信濃毎日新聞の記事によると、「自立し生活できる支援をするべきだ」と主張されています。

大賛成です!

ただし、今はまだその段階ではない!!!

避難者はあくまで避難者です。一時的にその場にいるにすぎません。そのような状況で、今後どうするか、ということを決めることができるわけがありません。

いつ離れるかもわからない土地で、自立し生活できるだけの基盤を作ることができますか?

 

おりしも、直前の7月20日に、政府から「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方」が発表されました。

http://www.meti.go.jp/press/2012/07/20120720001/20120720001.html

それをうけて、24日に東京電力から避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施についてというプレリリースが発表に。

http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1206810_1834.html

しかしながら、実際の賠償受け付けの開始は全くめどが立っていないのが実情です。作業量が膨大すぎます。前例もありませんし。

http://www.minpo.jp/news/detail/201207252673

 

とはいえ、この賠償が始まれば、避難者はある程度まとまったお金を手にして、それをもとに生活再建をすることができるようになると思います。生活再建や、それに対する自立支援は、それから必要になることです。

まずはまとまった賠償を受け取りましょう。そして、できれば1年程度の熟慮期間を設けましょう。

そして、後悔が無いよう、避難者がどのような生活再建をするか判断し、その判断に基づいた生活再建に対し、行政はできる限りの支援を行うべきです。

 現段階で、避難者に自立を求めるのは、酷というものです。